夫は、私のやることなすことに文句を言ったり、叱ったり・・・

すぐに怒鳴ったり、不機嫌になったり、長い間無視し続けたり

かと思えば、夜中、何時間も延々と、私の人格を否定するような言葉で説教し続けたり・・・

私に直接手を挙げることはないけど、物に八つ当たりするから、怖くてしかたない。

私は、一体、何をどうしたら良いの?

夫の顔色をうかがうだけの毎日から解放されたい気持ち悪い

離婚したい!

 

このように、

身体的暴力はないけれども、夫から、言葉や態度で、繰り返し執拗に人格を否定されて、傷つけられて、恐怖や苦痛しか感じられない。

そんなモラルハラスメント(言葉の暴力)を理由に、離婚を考えている女性もいらっしゃるかもしれません…。

 

今回は、離婚理由(離婚原因)のうち、「モラルハラスメント(言葉の暴力)」についてお話いたします。

 

2017年7月5日付ブログ「夫からの暴力に、もう耐えられない!暴力を理由に、離婚できる?~離婚原因⑥暴力」の中でも、少しお話ししましたが、

広い意味では、「暴力」には、身体的暴力だけではなく、言葉の暴力・精神的暴力や経済的支配なども含みます。

その広い意味での「暴力」の1つになるのが、「言葉の暴力」。

最近では、「モラルハラスメント(モラハラ)」という用語を使うことも増えてきました。

モラルハラスメント(言葉の暴力)は、言葉や態度で相手の人格を繰り返し執拗に傷つけ、その恐怖や苦痛によって相手を支配し、思い通りに操ろうとすることをいいます。

相手を支配するための手段の1つであり、実態としては、身体的暴力と変わらず、人格を否定する行為。

言語道断です!

そのため、モラルハラスメント(言葉の暴力)も、民法が定める離婚原因の1つである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(770条1項5号)として、離婚原因になります。

 

ここで、重要になってくるのが、

モラルハラスメント(言葉の暴力)があったことを裏付ける証拠を確保しておくことです。

 

これまた、2017年7月5日付ブログ「夫からの暴力に、もう耐えられない!暴力を理由に、離婚できる?~離婚原因⑥暴力」の中でも、お話ししているとおり、

どんな離婚理由であっても、離婚訴訟一般に、証拠の確保は大事なのですが…

離婚訴訟の中で、モラルハラスメント(言葉の暴力)が問題になる場合。

そのやりとりがなされるのは、

夫と妻しかいない。せいぜい、他に誰かいても、幼い子どもだけ。

そんな場面であることが、圧倒的多数です。

そして、

いざ離婚訴訟となると、

妻は「夫からこんなことを毎日のように繰り返し言われた。夫は、こういうときには、こんな態度を取っていた」などと主張する。

他方で、夫は「そんなことしていない。」と主張する。

双方の言い分が、真っ向から食い違う!

ということも、少なくありません。

 

しかも、身体的暴力は、程度がひどい場合には、怪我が残ってしまうこともあります。

そうなると、怪我の写真や、治療のために病院に出向いた場合には診断書という証拠が残ります。

ただ、モラルハラスメント(言葉の暴力)は、言葉や態度という、目に見えないものが対象になってきます。

その上、受けたダメージは相当に大きいのに、身体的暴力よりも更に、被害の実態が、目に見えにくいという大変さがあります。

そのような大変さはあるのですが、だからこそ、離婚訴訟となった場合には、少しでも、モラルハラスメント(言葉の暴力)が存在したことを裏付ける証拠を確保しておくことが大事になります。

 

離婚訴訟で登場することが多い証拠としては

●日記やメモ

●怒鳴り声や会話を録音したもの

●相手から来たメールやSNS上のメッセージ

●壊された物の写真

などなど。

 

また、そもそも「モラルハラスメント(言葉の暴力)」といえるのか?というところも、

他の離婚理由に比べて、実際に担当する法律家個人の価値観によって影響を受けやすいところであり、判断が大変難しいケースも多い

と、個人的には思っています。

「モラルハラスメント(言葉の暴力)」というまでには達していない、喧嘩の範囲に留まるんじゃないの?とか。そのくらいは、まだお互いに我慢しないといけない範囲じゃないの?とか。

ご相談を受ける際、私から見ても、「モラルハラスメント」「言葉の暴力」というキーワードが一人歩きして、まだ、喧嘩の範囲という気もするなあ~というときもありますが。

これは、「モラルハラスメントの領域でしょ!」と、私が感じるケースでも、よくよくうかがうと、前に別の弁護士に相談していて「まだ喧嘩の範囲でしょ、子どもも小さいんだから、そのくらい我慢しなさい」と言われて、すごく傷を深めてしまった女性もいらっしゃったり・・・。

同じ法律家であっても、判断が分かれることも多い。

そうなると、離婚訴訟になった場合、裁判官は、どう考えるのだろうかと推測するのが、とても難しかったりすることもあります。

正直言うと、弁護士からしても、「モラルハラスメント(言葉の暴力)」は、場合によっては、アドバイスするのが難しいことも多い分野の1つだと感じています。

 

ともあれ。

 

モラルハラスメント(言葉の暴力)は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として離婚原因になる。

そして、

言葉や態度という目に見えないものが対象になる。

受けたダメージも、端からは見えにくいという特徴がある。

だからこそ、

モラルハラスメント(言葉の暴力)があったことを裏付ける証拠を確保しておくことが、大事!

ということを、まずは、頭に入れておきましょうGOOD