財産分与とは、夫婦が結婚している間に一緒に築いた財産を、離婚するときには、夫と妻、それぞれに財産を分けることをいいます。

なお、不動産がある場合は、住宅ローンとの関係で、少し複雑な話になります。

そのため、不動産については、項目を分けて、「財産分与 ~その2 不動産があるときの考え方」で詳しくご説明します。

それでは、まずは、財産分与の全体像をみていきましょう!

 

手続

○ 協議

まずは、夫婦間で話し合いをします。

夫婦で話し合いをしても決まらない場合には・・・

○ 調停

財産分与については、離婚調停の中で、いろいろある離婚条件の1つとして、話し合いのテーマになることが多いです。

なお、財産分与についてだけをテーマにした調停をすることもできます。

調停をしても決まらない場合には・・・

○ 訴訟 or 審判

裁判官が、財産分与の方法などを判断します。

 

財産分与の対象になる財産って、なに?

財産分与について決めていくには、まず、対象になる財産を確定する必要があります。

そのときに、次の3点に注意しましょう。

 

① 名実ともに夫婦の片方だけのものである財産(特有財産)は除く。

名実ともに夫婦の片方だけのものである財産のことを、「特有財産」といいます。

財産分与は、夫婦が結婚中に協力して築いた財産を分ける制度です。

そのため、明らかに夫婦の片方だけの財産(特有財産)については、財産分与対象から除かれます。

例えば

●結婚前から持っていた財産。

●結婚中に取得した財産であっても、パートナーとは無関係に取得した財産(相続した財産など)。

 

② 「夫名義 = 夫だけの財産」ではない。

名義にとらわれずに、夫婦が協力して築いた財産かどうかを考えていきます。

そのため、財産の名義が、夫や妻の片方名義になっていたとしても、必ずしも片方だけの財産である(特有財産)とはなりません。

また、夫婦以外に、子ども名義になっている場合もありますよね?

たとえば、子どもがまだ赤ちゃんだけど、夫の稼いだお金の一部を、子ども名義の預貯金にしているケース。

この場合も、当然に子ども固有の財産になるとは限りません。

むしろ、夫婦が結婚中に協力して築いた財産として、財産分与対象の財産に分類されます。

 

③結婚中に取得した財産は、夫婦の協力で築かれた財産であると推定する。

夫婦が協力して築いたものではないことを示す特別な事情がない限り、結婚中に取得した財産は、財産分与対象の財産と考えます。

 

ちなみに、妻が専業主婦、夫だけが働いているという場合。

「自分だけが働いたお金で取得した財産なんだから、お前に分ける財産なんて、無いんだ!」なんて言う旦那さんもいるかもしれません。

しかし、妻が専業主婦であっても、いわゆる「内助の功」があったから財産が築けた、というのが法律上の発想。

妻が専業主婦でも、結婚中に取得した財産は、夫婦が協力して築いた財産として考え、財産分与対象の財産とされますので、ご心配なく。

 

いつ時点の財産が対象になるの?

基本的に、別居時点を基準にします。

財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を分ける制度であり、別居した時点で夫婦の協力関係が終了したと考えるからです。

 

財産の典型例

財産の種類と、その内容・金額などを裏付ける資料の典型例を示しておきます。

※ 預貯金:通帳など

※ 不動産:登記、固定資産の納税通知書や固定資産評価証明書など

※ 保険(生命保険、医療保険など):保険証券や解約返戻金計算書など

※ 車:車検証や査定書など

※ 有価証券(株、投資信託など):株券や証券会社からの報告書など

 

財産分与の計算方法

財産分与対象財産が確定できたら、次は、具体的な財産分与の計算方法をご紹介します。

具体例を使って見ていきましょう。(なお、特有財産はゼロという前提です。)

●預貯金:夫名義500万円、妻名義100万円

●車:夫名義 50万円

●借金(結婚中にできたもの):夫名義200万円

 

【ステップ1 財産分与対象になる財産の合計額を計算する。】

まずは、財産分与対象財産の合計額を計算します。

具体例でみると・・・

500万円(預貯金:夫名義)+100万円(預貯金:妻名義)+50万円(車:夫名義)

=650万円

 

【ステップ2 財産分与対象財産合計額から、借金の合計額を引く。】

ステップ1で計算した金額から、結婚中にできた借金の金額を引き算します。

具体例でみると・・・

650万円(ステップ1の計算結果)-200万円(借金:夫名義)

=450万円

 

【ステップ3 財産分与割合を掛ける。】

夫婦の財産形成に対する貢献割合に応じて、財産を分ける割合を決めて、掛け算します。

財産分与割合は、基本的には2分の1です。妻が専業主婦のケースでも同じです。

その結果、夫と妻、それぞれが持つべき金額が出てきます。

具体例でみると・・・

財産分与割合は2分の1として計算してみましょう。

450万円(ステップ2の計算結果)×1/2(財産分与割合)

=225万円

つまり、具体例では、夫と妻が、それぞれ225万円の財産を持つように分けることになります。

 

【ステップ4 具体的な財産分配方法を調整する。】

具体例でみると・・・

妻が自分名義の預貯金100万円を離婚後も持ち続けるとした場合。

225万円(ステップ3の計算結果)-100万円(妻名義預貯金)

=125万円

妻は、夫に対して、残り125万円分の財産をくれるように請求できます。

 

そこで、残り125万円を具体的にどのような方法でもらうのか、調整をしていきます。

125万円全額を夫名義預貯金からもらう、という調整もあります。

もし、妻が車を欲しいという場合には、50万円(車)をもらって、残り75万円(125万円-車50万円)を夫名義預貯金からもらう、という方法も考えられます。

このように、具体的な財産分配方法を考えて、調整をしていきます。

 

財産よりも借金が多いとき

具体例を少し変えてみます。

●預貯金:夫名義500万円、妻名義100万円

●車:夫名義 50万円

●借金(結婚中にできたもの):夫名義800万円

ステップ1は、先ほどと同じく、計算結果は500万円+100万円+50万円=650万円。

ステップ2は、650万円-800万円=-150万円。

計算結果が、マイナスになってしまいました。

ステップ2の金額がマイナスになる場合には、分けるべき財産が存在しないということです。

そのため、法律上、「財産分与はできない」ということになります。

「この場合、妻も、借金の半分を背負うの?!」

という不安な声も聞こえてきそうですが、妻自身が連帯債務者や保証人になっていない限り、借金を負担することにはなりません。

このあたりは少し難しい問題なので、「財産分与 ~その2 不動産があるときの考え方」で詳しくご説明します。

 

気を付けて!!請求できる期間に制限があります!!

財産分与については、もちろん離婚するときに同時に決めることもできます。

また、財産分与については保留したまま離婚して、離婚した後に財産分与について決めていくこともできます。

ただし、財産分与は、離婚した時から2年を過ぎてしまうと請求できなくなってしまうので、要注意!!

 

財産分与のことでお悩みの女性へ

財産分与の全体像についてみてきましたが、いかがでしたか?

もしかすると、計算をしなくちゃいけないし、なんだか難しそう・・・と思われたかもしれませんね。

財産分与のことでお悩みの女性は、まずは私、弁護士安田英里佳に相談予約のご連絡をしてみてください。

そうすれば、重くのしかかっている心の負担が軽くなって、次に進む勇気が出てきますよ!

相談予約の方法はこちらの「ご相談の案内」をご覧くださいね!

(※ 法律相談中など他業務に従事している間は、電話対応が難しく、電話は繋がりにくい状況です。

相談のご予約は、「ご相談の案内」ページ下部にあるメールフォームご利用をおすすめいたします

電話の場合は、留守番電話に必ずメッセージを残してくださいますようお願いいたします。)

 

○離婚の基礎知識目次○

第1章 離婚手続 ~離婚までの3ステップ

第2章 離婚するときに確認すること、決めること

第3章 親権者を決めましょう

第4章 養育費を請求するには・・・

第5章 子どもとの面会交流

第6章 財産分与 ~その1 全体像

第7章  財産分与 ~その2 不動産があるときの考え方