住宅ローンを組んで、マイホームを購入。

しかし、夫婦は離婚することに・・・

住宅ローンと家は、どう処理されるのでしょう?

 

不動産と住宅ローンがある場合は、財産分与の応用問題。

不動産の価値と住宅ローン残額のどちらが高いかによって、大きく話が変わってきます。

離婚の基礎知識「財産分与~その1 全体像」の「財産分与の計算方法」と「財産よりも借金が多いとき」の項目も復習しながら、詳しくみていきましょう!

 

【ケース①】 不動産の価値 > 住宅ローン残額の場合

次のような具体例でみてましょう。(特有財産や、そのほかの財産・借金はゼロという前提です。)

●土地・建物:夫名義合計2000万円

●住宅ローン残額:夫名義1000万円

 

まずは、財産分与の計算方法にしたがって考えていきます。

【ステップ1 財産分与対象になる財産の合計額を計算する。】

具体例でみると・・・

財産=2000万円(土地・建物)になりますね。

【ステップ2 財産分与対象財産合計額から、借金の合計額を引く。】

具体例でみると・・・

2000万円(ステップ1の結果)-1000万円(住宅ローン:夫名義)

=1000万円

計算結果がプラスになったので、財産分与の問題となります。

【ステップ3 財産分与割合を掛ける。】

具体例でみると・・・

財産分与割合は2分の1として計算してみましょう。

1000万円(ステップ2の計算結果)×1/2(財産分与割合)

=500万円

つまり、具体例では、夫と妻が、それぞれ500万円の財産を持つように分けることになります。

【ステップ4 具体的な財産分配方法を調整する。】

具体例でみると・・・

不動産を売却する場合や、夫が住み続けてローンの支払いも続けるような場合には、妻は、夫に対して、500万円分の財産をくれるように請求できます。

もし、妻が土地・建物を欲しいという場合には、1000万円(土地・建物)をもらって、残り500万円を夫に支払うという方法も考えられます。

このように、具体的な財産分配方法を考えて、調整をしていきます。

 

手続も、離婚の基礎知識「財産分与~その1 全体像」でお話した手続となります。

つまり、まずは、夫婦間で協議します。

夫婦間の協議がうまくいかなければ、家庭裁判所で調停を行います。

調停でも話がまとまらない場合には、裁判所が審判で決めます。

 

【ケース②】 不動産の価値 < 住宅ローン残額 (オーバーローン)の場合

次のような具体例でみてましょう。(特有財産や、そのほかの財産・借金はゼロという前提です。)

●土地・建物:夫名義合計1000万円

●住宅ローン残額:夫名義2000万円

 

まずは、【ケース①】と同様、財産分与の計算方法にしたがって考えていきます。

【ステップ1 財産分与対象になる財産の合計額を計算する。】

具体例でみると・・・

財産=1000万円(土地・建物)ですね。

【ステップ2 財産分与対象財産合計額から、借金の合計額を引く。】

具体例でみると・・・

1000万円(ステップ1の結果)-2000万円(住宅ローン:夫名義)

=-1000万円

計算結果が、マイナスになってしまいました。

ステップ2の金額がマイナスになる場合には、分けるべき財産が存在しないということです。

そのため、法律上、「財産分与はできない」ということになります。

 

それでも、現実には、「不動産の所有名義を変更するかどうか、住宅ローンの今後の支払いについてどうするのか、きちんと話し合っておきたい!」

ということもありますよね?

そのため、家庭裁判所の調停の中で、不動産の所有名義のことや、住宅ローンの今後などについて、話し合いをすることが多いです。

しかし、あくまで、法律上は「財産分与はできない」ケース。

そのため、調停で折り合いがつかなかった場合には、裁判所が審判で決める対象にはなりません。

 

ちなみに、「この場合、妻も、借金の半分を背負うの?!」

という不安な声も聞こえてきそうですが、妻自身が連帯債務者や保証人になっていない限り、借金を負担することにはなりません。

 

【ケース③】不動産の価値 < 住宅ローン残額(オーバーローン)&妻がローン債務者の場合

ケース②の具体例を少し変えましょう。

●土地・建物:夫名義合計1000万円

●住宅ローン残額:夫名義2000万円、妻が連帯保証人。

【ステップ1 財産分与対象になる財産の合計額を計算する。】

具体例でみると・・・

財産=1000万円(土地・建物)。

【ステップ2 財産分与対象財産合計額から、借金の合計額を引く。】

具体例でみると・・・

1000万円(ステップ1の結果)-2000万円(住宅ローン:夫名義)

=-1000万円

計算結果が、マイナスですから、法律上、「財産分与はできない」ケースです。

 

「私、家は要らないし、ローンの支払いは離婚後も夫に任せたい。だから、もう連帯保証人から抜けたいわ。」

という方もいるのではないでしょうか?

しかし、妻が連帯保証人から抜ためには、金融機関の承諾が必須!

裁判所の手続きとは別に、金融機関に承諾してくれるように交渉をする必要があります。

なお、金融機関から承諾を得るためには、同程度の信用がある別の保証人を立てること等を要求されることが多いのが実情です。

 

不動産がある離婚のことでお悩みの女性へ

財産分与の応用事例、不動産がある場合の考え方をみてきましたが、いかがでしたか?

もしかすると、離婚を考えているけれども、家もあるし、ローンの保証人や連帯債務者などになっていて、どうしたらよいのか困り果ててしまっている方もいるかもしれません。

特に、不動産がある場合、不動産業者さんに査定をしてもらったり、住宅ローンの残額を確認するために銀行に照会したりすることもあります。

そうなると、資料を集めるのに時間がかかってしまうこともあります。

また、離婚した後に財産分与を考えている方は、2年の請求期限があります。

財産分与、特に不動産があってどうしようとお悩みの女性は、まずは私、弁護士安田英里佳に相談予約のご連絡をしてみてください。

そうすれば、重くのしかかっている心の負担が軽くなって、次に進む勇気が出てきますよ!

相談予約の方法はこちらの「ご相談の案内」をご覧くださいね!

(※ 法律相談中など他業務に従事している間は、電話対応が難しく、電話は繋がりにくい状況です。

相談のご予約は、「ご相談の案内」ページ下部にあるメールフォームご利用をおすすめいたします

電話の場合は、留守番電話に必ずメッセージを残してくださいますようお願いいたします。)

 

○離婚の基礎知識目次○

第1章 離婚手続 ~離婚までの3ステップ

第2章 離婚するときに確認すること、決めること

第3章 親権者を決めましょう

第4章 養育費を請求するには・・・

第5章 子どもとの面会交流

第6章 財産分与 ~その1 全体像

第7章  財産分与 ~その2 不動産があるときの考え方