たとえば。
妻が強度の精神病にかかってしまった!
夫が、そんな妻との生活に限界を感じて、離婚請求。
これって、離婚できるの?
離婚原因について、民法が定める順番に従って、ご紹介しています。
(「そもそも、『民法が定める離婚原因』って、なんぞや?」という方は、2017年4月12日付ブログ「どういう離婚理由のとき、~民法が定める5つの離婚原因」をご覧ください!)
今回は、「回復の見込みのない強度の精神病(民法770条1項4号)」のお話をいたします。
正直、2017年4月26日付ブログ「夫が行方不明・生死不明に!離婚できる?~離婚原因②悪意の遺棄と配偶者の3年以上の生死不明」と同じく
今回ご紹介する「回復の見込みのない強度の精神病」も、実際に問題になることは、ごくまれ。
これまた、雑学の1つとしてでも、お付き合いいただければと思います…
民法が定める5つの離婚原因の4つめが、
「回復の見込みのない強度の精神病」(民法770条1項4号)です。
結婚生活は、夫婦お互いに、こころのつながり・交流ができることが大切。
でも、パートナーの一方が、回復の見込みのない強度の精神病にかかってしまったとなると、こころのつながり・交流が全くできない・・・
こころのつながり・交流が全くできない結婚生活にずっと縛り付けられるのは、さすがに、しんどすぎる・・・
解放してあげる必要があるよね
という考えに基づく規定です。
ここで、「なんていう病名の精神病になったら、離婚原因なの?」と疑問に思われるかもしれません。
でも、この病気になったら、離婚原因になります!という特定の病気があるわけではありません。
あくまで「回復の見込みのない」というレベルのものである必要がありますし、医療も日々進歩しているので、病名だけで直ちに回復の見込み無しとは言い切れません。
実際には、個々に、お医者様がその方の状態を診て「回復の見込みのない強度の精神病」といえる状態なのかを判断してもらうことになります。
さて。
もし、残念ながら、「回復の見込みのない強度の精神病」といえる状態にあると認められた場合。
じゃあ、夫が、病気の妻の面倒をろくにみないまま、妻を放置して、とっとと自分1人家を出て、ぬくぬく暮らし始めたような場合。
それでも、夫からの離婚請求を認めちゃうの?
残された妻は、身の回りのこともできないんじゃないの?
生活にかかるお金とか、自分では稼げないだろうし。どうするの?
妻だって、好きで精神病になったわけじゃないのに…
病気になった妻に対して、酷すぎるんじゃない?
民法の意地悪!!!
と思われた方もいるかも知れません。
しかし!
民法も、そこまで意地悪ではありません(笑)
ちゃんと、民法770条2項という定めを置いて、フォローできるようにしています。
民法770条1項がいう「離婚原因」がある場合でも、色々な事情を考慮して、結婚生活を継続するのが相当と認めるときは、離婚請求を認めないこともできる。
としています。
そして、夫が、妻が「回復の見込みのない強度の精神病」にかかったことを離婚原因として離婚請求したという裁判例の中で、裁判所は、病気になった方に対するフォローも、きちんと考えています。
つまり、離婚請求する側が、回復の見込みのない強度の精神病にかかったパートナーに対して、自分と離婚しても、今後の療養・生活等に困らないように、できる限りの具体的な方策(たとえば、公的保護を受けて療養できる体勢を整えたとか、療養ができるように十分なお金を渡すとか)をやって、ある程度、その方策の見込みがついた上じゃないと、離婚を認めるべきではない、としています。
このように
民法が定める離婚原因の中には
「回復の見込みのない強度の精神病」というものがある。
ただ、離婚原因があるといえる場合でも、いつでも、すぐに離婚OK!となるとは限らない。
「回復の見込みのない強度の精神病」という離婚理由の場合には、今後の療養・生活等に困らないように、できる限りの具体的な方策を講じて、ある程度、その方策の見込みがついた上じゃないと離婚できない、と考えられている。
ということを頭に入れておきましょう