やすえり弁護士の離婚基礎知識シリーズ。

前回までは、財産分与について、ネチネチ説明していましたが。

 

今回は、突如、慰謝料の話で!

 

某検索サイトのトップニュースや、

テレビ番組なんかで取りあげられていたので、目にした方も多いかも知れません。

 

今日(2019年2月19日)

最高裁で、浮気相手に対する慰謝料請求に関する重大判例が出ましたっ!

 

というわけで、珍しく時事ネタ。

今日は、少し戻って、離婚に伴う慰謝料請求のお話。

 

ちなみに、以前の慰謝料請求についてのブログは、以下の4つ。

離婚する時に慰謝料請求したい!そもそも離婚の慰謝料請求って、どんな仕組みなの?

離婚する時に慰謝料請求したい!慰謝料請求の金額ってどのくらいなの?

夫の浮気が発覚!夫に慰謝料請求したい!

夫の浮気が発覚!浮気相手女性に慰謝料請求したい!

 

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・・・と、

いきなり、最高裁の判例のご紹介をする前に。

 

「離婚に伴う慰謝料」

と一言でいっても、

厳密にいうと、2種類あります。

 

実は、以前に離婚に伴う慰謝料請求のブログを書くときに、

書こうかなーどうしようかなーと迷った結果、

かえって混乱するかなーと思って、

敢えて書くのを省きました。

でも、今回の最高裁の判例は、この知識を前提とします。

なので、まずは、その前提知識

「離婚に伴う慰謝料」って、実は2種類あるんだよ。

という話のご説明から。

 

それと、これまた以前は言及していなかった

慰謝料請求の時効の話も、

ご説明します。

 

「離婚に伴う慰謝料」

1種類目が、

①離婚自体に対する慰謝料。

つまり、離婚そのものによって生じる精神的苦痛を償うための慰謝料。

 

2種類目が、

②個別の離婚原因に対する慰謝料。

離婚を招いた個別の離婚原因(たとえば暴力や浮気)による精神的苦痛を償うための慰謝料。

 

「離婚に伴う慰謝料請求」といっても、

いったい、2種類のうちのどっちか?

ということで、いくつか違いがあります。

 

大きな違いが出る問題の1つが、時効の問題です。

 

請求する権利があっても、

損害と加害者を知ってから3年間権利行使しないまま放置すると、

時効(消滅時効)にかかります。

加害者側が、もう時効ですよーと言うと、

慰謝料請求できる権利が消えてなくなっちゃいます。

なので、もう請求できませんよーとなります。

 

なので、時効3年間のカウントが、いつから始まっちゃうか?

というのは、死活問題になる場合もあります。

 

たとえば、

2010年に夫の浮気発覚。

→夫が浮気したことで精神的苦痛を被ったから、損害(慰謝料では精神的苦痛)が発生したことも知っている。

&少なくとも、加害者の1人が夫であることも当然知っている。そりゃそうだという状態。

でも、夫には慰謝料請求しないままでいた。

そして、2019年に、離婚成立した。

引き続き、2019年のうちに、(元)夫に慰謝料請求することにした。

こんな場合を考えてみましょう。

 

①離婚自体に対する慰謝料請求の場合は、

離婚成立からカウント開始になります。

上記の例では、離婚成立した2019年から時効カウント。

まだまだ余裕ですね。

 

他方で、

②個別の離婚原因に対する慰謝料請求という場合は、

2010年には、損害と加害者について知っていた。

なので、2010年から時効カウントが始まります。

でも、ずーと放置して、慰謝料請求しなかった。

そうなると、2019年には、もうとっくに3年以上過ぎちゃっています。

夫が、そりゃもう時効でしょうよと言えば、

妻は、慰謝料請求ができなくなっちゃいます。

ひゃー号泣

 

理屈では、こんな風に違いがあるものの

実際の運用では、

そこまで厳密に、2種類のうちどっちの請求かって区別されてないことも多いです。

 

「夫相手」の離婚請求などの中で、慰謝料請求が問題となった場合。

敢えて特定せよ!というのであれば、

だいたい、①離婚自体に対する慰謝料請求として請求する趣旨で請求する。

ということが多いかなと思います。

 

では、

「浮気相手」に対する慰謝料請求の場合。

どっちの請求なんだろ?

実は、意外とどちらの趣旨の慰謝料請求か、

明確には区別されないで運用されてきたところもあります。

 

①離婚自体に対する慰謝料請求としているように見えたり。

②個別の離婚原因に対する慰謝料請求としているようにも見えたり。

夫相手の慰謝料請求の場合は、主流は①かなと。

そうなると、浮気相手にも①で請求しているってことか?

でも、浮気相手にとっては、夫婦が離婚するかどうかって関知しにくいし。

そうなると、②か?

結局、統一見解みたいなものがない感じ。

過去の判例も、解釈がマチマチに見えたり。

地味に、うやむやな感じで進んでいたところでした。

まあ、それでも、別に大きな違いが生じないケースも多い。

浮気発覚後、配偶者にはまだ請求はせずに様子見るけど、浮気相手には、真っ先に慰謝料請求する!というケースの方が多い気がしますもの。

そんなに①か②か明確にしなくても、浮気発覚してから3年も経たずに行動開始しているから、実害が無いことも多い。

というのが実情のような気も。

でも、時効問題が絡んだ場合には、実は、①か②かで結果が全然違っちゃうわけです。

うーむ・・・

よくよく考えると、だんだん、わからんくなるなあー。

という、弁護士としても悩ましい。

地味な難問なわけです。

(だから、以前の離婚基礎知識では、「基礎」レベル超える気がして、詳しく書く気分にならなかった笑)

 

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さてさて。

ここまでお勉強したところで。

 

今日(2019年2月19日)に出た最高裁判例の話。

(平成31年2月19日 平成29年(受)第1456号 損害賠償請求事件)

この地味な難問に切り込んだ、画期的判決なわけです。

(※裁判所HPを参照しました。)

 

浮気したのは妻。

平成21年6月以降、浮気を開始。

夫は、平成22年5月ころ、妻と浮気相手の不貞関係を知った。

平成26年11月ころ、夫が離婚調停申立て。

平成27年2月25日離婚成立。

その後、(元)夫が、浮気相手に対して慰謝料請求をしたケース。

 

背景を考えると、

①離婚自体に対する慰謝料請求と解釈すると、

離婚成立(平成27年2月25日)が時効カウントスタートなので、

まだ消滅時効にはかからない。

②個別原因の離婚原因に対する慰謝料請求と解釈すると、

浮気と相手を知った時(平成22年5月ころ)に時効カウントスタート。

時効にかかって、慰謝料請求できなくなる。

そんなわけで、

元夫としては、浮気相手に対して、

①離婚自体に対する慰謝料請求の趣旨で請求するという前提に立っています。

 

最高裁判所は、

浮気相手には、基本的には、①離婚自体に対する慰謝料請求をすることはできない。

浮気相手にも、①離婚自体に対する慰謝料請求をすることができる場合は、

浮気相手が、浮気しただけにとどまらず、

夫婦を離婚させようと意図的に、婚姻関係に対して不当な干渉をして、

離婚やむなしという状態に追い込んだといえるような

「特段の事情」があるときに限定されますよー。

という一般論を、明確に示したわけです。

(注:表現は、やすえりが一部わかりやすいように修正。)

 

で、この一般論をもとに、

今回の場合は、どうかなと検討したところ、

今回は、こういう「特段の事情」がないから、

元夫の浮気相手に対する離婚自体に対する慰謝料請求は認めなかった。

という判断をしたようです。

 

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こむずかしかったかもしれませんが、

今回のまとめ!

 

離婚に伴う慰謝料請求といっても

厳密にいうと2種類ある。

①離婚自体に対する慰謝料請求と

②個別の離婚原因に対する慰謝料請求。

 

実務では、そんなに明確に区別されず、うやむやに慰謝料請求されることも多いけど、

消滅時効がからむ場合などには、

①と②、どちらの意味での慰謝料請求か、結果が全く違って、結構シビアな問題になることも。

 

そして、

今回のNEW最高裁判例では、

浮気相手に対しては、特別の事情がない限り、

基本的には、①離婚自体に対する慰謝料請求はできないよ。

と判断を示したよ!

ということで、覚えておきましょうひらめき